R18 獣注意です! 大丈夫な方はこちらからどうぞ







































































#1 




今夜の月は明るい。



畳に仰向けに横たわった夏目は、窓から空を見上げてふと思った。



「何を考えておるのだ?」



斑が夏目を見下ろして尋ねた。



「…別に。ただ、月が綺麗だなって」

「ほう。随分と余裕があるようだな。慣れてきたのか?」



夏目の両を前足で一まとめに押さえ込んだまま、斑は喉の奥でくっくと笑う。



「な、慣れてなんか!」



顔を真っ赤にして否定する夏目の口を斑は舌の先でぺろりと嘗めた。

大きな斑の舌は、それだけで夏目の口を塞ぐ。

息苦しさを感じた夏目が僅かでも唇を開けば、後は斑の思うままだ。


夏目の口いっぱいに斑の舌が入り込み、蹂躙する。



「む…うぅ…せ、せんせ…ぇ…」









夏目は口から舌を押し出そうとする。

朱に染まった顔をして、自身の舌と唇とを斑の舌に絡ませて。


しかしそれは、斑に舌ではない別のモノをしゃぶらせているような錯覚を興させ、斑を高ぶらせる。


夏目自身は全く気がついていないだろうが、拒否のための行動は次第に夏目の本能にも火を点し、
斑の舌をなぶることに夢中になっていくのだ。


その頃合いを見計らって、斑は夏目のパジャマの喉元に爪を引っかけて下ろし、
パジャマを開いた。

一つ一つボタンを外すような器用さも余裕も持ち合わせていないから、
ボタンは全て弾け飛んでいる。



「んっ…!」



行為に気を取られている夏目も、こうするとさすがに正気を取り戻す。

ボタンとつけなおすのが大変なんだぞ、

とは、最初にこうしたときからずっと夏目が訴え続けている苦情だ。

だが、行為そのものを本気で拒んだことはなかった。

だから斑は、現わになった腹に自分の腹を押し付けて擦り寄せる。

ただそれだけの行為なのだが、夏目の身体がびくんと跳ねる。

斑は歯を立てられる寸前に、夏目の口から舌を抜いた。



「舌を噛むなというのに」


「だから…それ、やだって」



柔らかい斑の毛が全身を撫で回すような感触は、全身の熱を一気に上げてしまう。

具体的なことをされているわけでないのに感じてしまうのが、夏目には恥ずかしい。

斑はその羞恥心こそが夏目の熱を煽っていることに気がついていた。



「ならば、違うことをするとしようか」



斑は身体を夏目の上から起こし、夏目の下跂からズボンを爪先で取り去った。



「ひゃっ…!」



爪が夏目の中心を掠め、悲鳴が上がる。

斑は喉を鳴らした。

前足の下から夏目の両腕を解放すると、器用に夏目を転がし俯せにした。



「ほら」



口で枕をくわえ夏目の目の前に差し出すと、
夏目はまるでそれが自分を救う物ででもあるかのように縋り付いた。




実際、この後に起こることは、何かに縋らねば夏目には堪えられないことだ。


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#2



枕に縋り付いた夏目の頭を斑は鼻先でつついた。



「ほら、夏目」



斑は夏目の耳元で囁く。

顔を枕に埋めたまま、夏目は怖ず怖ずと膝を立て、腰を上げる。



「やっぱり馴れてきたな」



「そんなこと――」



夏目の反論を斑は下跂を舌でなぶることで封じた。


足の間から舌を通し、腹から尻まで一息になめあげる。


その度に、枕に顔を押し付けたままの夏目から、くぐもった嬌声が上がる。



「やっ…もう…んっやっ…」


「いいんだろうに」



斑の舌に感じる僅かな苦みは、夏目が感じている証拠だった。


充分にそれを味わうと、斑はもう一度夏目に顔を寄せた。


そして、幼子にたいするような優しい声で尋ねた。



「どうする?できるか?」



夏目はそろそろと涙で汚れた顔を斑に向けて睨んだ。

斑があえて優しく夏目に問うのは、面白がっているからに過ぎない。

ここまで高められた身体を夏目一人で宥めることはもう無理であるし、

そもそも夏目は斑のことが好きなのだ。





こんなことまで許す程に。





「最後まで…」



夏目がこう答えることを知っていて、あえて尋ねる斑が憎たらしくて愛おしい。


夏目にも解っていた。



夏目が自分で動くよう斑が促すのは、夏目の思いを確認したいがゆえなのだ。

夏目が斑を受け入れていることを確認し、安心したいのだ。



「ならば、できるだろう?私ではお前を傷つける」



からかうように含み笑いとともに促されると、夏目は悔しくとも受け入れずにはおれなかった。


夏目は枕に顔を押し付けたまま身体を横倒し、震える指を双丘に伸ばす。

躊躇ってなかなかたどり着かない夏目の指に、斑は舌を絡ませて導いた。

唾液が夏目の細い指を濡らす。斑が鼻先で丘を割くと、そこは緊張して縮こまる。


まずは自身の舌で入口を濡らし、柔らかく溶かした。


途切れることのなかった夏目の嬌声も、指がついと触れた瞬間に途切れる。



これから自分がなすことへの羞恥に、夏目はいつも歯を食いしばるのだ。



「…夏目…」



どこか切ない響きを持って先を促す斑の声に導かれ、夏目は指を挿し入れた。




斑と繋がることを受け入れている自分を斑に示すために。




<NEXT>






































































#3


自分の指で慣らすというあまりに淫らな自分自身の姿を思い、
夏目は羞恥に震える。


指に絡み付いていた斑の舌が消えたことにも、夏目は気がつかなかった。




「…欲しいだろう、お前も」




ふいに斑が夏目の耳元でささやた。



いつの間にか身体を伸ばし、夏目の全身を包みこむように寄り添っている。

夏目は反射的に身体の向きを変えて大きな斑の首にしがみついた。



欲しいのは互いに同じだ。



斑の首に頬を押し付けて夏目は頷いた。

斑がノソリと動く。






夏目はぎゅっと目を閉じて、斑が自分を喰らうのを待った。




















嵐のような時間が過ぎ去って夏目が次に目を開けたとき、
すでに窓の外に月はなかった。

代わりに星が瞬いている。


ということはまだ夜は明けていないようだ。



「どうした。何を見ている?」



夏目の顔をニャンコ先生が横から覗きこんだ。

夏目としては、この姿でいてくれるほうが有り難かった。

目を覚ましたときに斑の姿を見ると、情事のことを思い出し赤面してしまう。



「星を見てただけだよ」



ニャンコ先生の頭を撫でようと身じろぎすると、
自分の身体に布団がかけられていることに夏目は気がついた。

パジャマも代えられてすっきりとしていた。



「ありがとう」



素直に礼を述べるとニャンコ先生はぷいと赤い顔を背けた。



「ふん!軟弱なやつめ!」



「そう思うならもうちょっと労ってくれよ」



夏目が言うとニャンコ先生は横目でちらりと夏目を見て、トコトコと顔に寄ってきた。


そして夏目の首筋をぺろりと嘗める。


斑のときとは違うザラザラの舌は、夏目に痛みを与えた。



「こら、痛いだろ!ニャンコの舌はざらざらなんだからな!」


「ニャンコじゃないと言っとろうが!…少し血が滲んでおったから、とってやったんだ」



夏目が首筋に触れると、確かに細い切り傷がそこにはあった。

おそらくは斑の爪だろう。

どれほど気をつけていても、事の後にはたいてい一つや二つは残る。

大きな獣と交わるのであれば、当然のことだ。

それをニャンコ先生は殊更に気にする。



「大丈夫だよ。それより寝よう、先生」



夏目は布団の端を上げた。



「ふん!」



気取ったあしどりで、ニャンコ先生が夏目の隣に入る。

触れ合う部分がぽかぽかと暖かい。

この時が夏目は好きだった。




互いの存在を実感しながら、二人は同時に目を閉じた。


<end>