自分の指で慣らすというあまりに淫らな自分自身の姿を思い、
夏目は羞恥に震える。
指に絡み付いていた斑の舌が消えたことにも、夏目は気がつかなかった。
「…欲しいだろう、お前も」
ふいに斑が夏目の耳元でささやた。
いつの間にか身体を伸ばし、夏目の全身を包みこむように寄り添っている。
夏目は反射的に身体の向きを変えて大きな斑の首にしがみついた。
欲しいのは互いに同じだ。
斑の首に頬を押し付けて夏目は頷いた。
斑がノソリと動く。
夏目はぎゅっと目を閉じて、斑が自分を喰らうのを待った。
嵐のような時間が過ぎ去って夏目が次に目を開けたとき、
すでに窓の外に月はなかった。
代わりに星が瞬いている。
ということはまだ夜は明けていないようだ。
「どうした。何を見ている?」
夏目の顔をニャンコ先生が横から覗きこんだ。
夏目としては、この姿でいてくれるほうが有り難かった。
目を覚ましたときに斑の姿を見ると、情事のことを思い出し赤面してしまう。
「星を見てただけだよ」
ニャンコ先生の頭を撫でようと身じろぎすると、
自分の身体に布団がかけられていることに夏目は気がついた。
パジャマも代えられてすっきりとしていた。
「ありがとう」
素直に礼を述べるとニャンコ先生はぷいと赤い顔を背けた。
「ふん!軟弱なやつめ!」
「そう思うならもうちょっと労ってくれよ」
夏目が言うとニャンコ先生は横目でちらりと夏目を見て、トコトコと顔に寄ってきた。
そして夏目の首筋をぺろりと嘗める。
斑のときとは違うザラザラの舌は、夏目に痛みを与えた。
「こら、痛いだろ!ニャンコの舌はざらざらなんだからな!」
「ニャンコじゃないと言っとろうが!…少し血が滲んでおったから、とってやったんだ」
夏目が首筋に触れると、確かに細い切り傷がそこにはあった。
おそらくは斑の爪だろう。
どれほど気をつけていても、事の後にはたいてい一つや二つは残る。
大きな獣と交わるのであれば、当然のことだ。
それをニャンコ先生は殊更に気にする。
「大丈夫だよ。それより寝よう、先生」
夏目は布団の端を上げた。
「ふん!」
気取ったあしどりで、ニャンコ先生が夏目の隣に入る。
触れ合う部分がぽかぽかと暖かい。
この時が夏目は好きだった。
互いの存在を実感しながら、二人は同時に目を閉じた。
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